パリの中で一番高い位置にあるモンマルトルの丘。
その丘の頂上にあるサクレクール寺院は、戦争の犠牲者をまつるために1914年に建設された。
”聖なる心臓”を意味する”サクレ・クール”という名前にふさわしい純白の寺院だ。
パリと言えばエッフェル塔、凱旋門と名だたる観光スポットがあるが、ここ”モンマルトルの丘”もパリ市内が一望できるために人気観光スポットの1つとなっている。
元々モンマルトルは、ブドウ畑や風車がシンボルのパリ郊外の農地だったが、その美しさに魅了されてヴァン・ゴッホなどの芸術家が集まった場所として有名である。
そんな風情あるところなら、ぜひ行ってみたいと旅行前から思っていた。
長く続く階段をせかせか歩くのを止めて後ろを振り返る。
パリを一望できる壮大な眺め。
「これが花の都パリか。
どこか風格すらあるような街の風景に酔いしれる。
それにして観光客がすごい数だ。
大道芸が始まれば、人だかりができて、さらに人口密度が上がる。
どこの観光地に行っても、観光客は自撮りして、数分眺めただけでそそくさと次の観光へ向かう。
しかし、この丘では皆ゆっくり腰を下ろしてくつろいだり語り合ったりしている。
階段の空いてるスペースに自分も座ってみる。
1人旅は話し相手がいないので、ふとした瞬間に寂しいと感じることがある。
普段はどんどん話しかけて積極的に新しい友だちを作っていくけど、それが面倒だと感じる消極的な時もある。
今は、バックパックを膝の上に置いてしばし人間観察と美しい景色を楽しもう。
友人同士やカップルもいれば、子ども連れの家族もいる。
だいたい家族連れの観光客の場合、子どもは観光スポットには興味がなく、兄弟同士でじゃれ合ったり、ふざけて走り回っている。
この子たちは成長した後に思い出すのだろうか?結局楽しんでるのは親側だけなのかな?
しかし、親たちでさえも、写真を数枚撮って、説明書きの看板を流し見て終わる。
本当にこの場所に来ている意味はあるだろうか?
かくいう自分も、観光スポットの歴史やルーツは全く調べないで旅行に来ているわけなので、人のことをとやかく言う資格はない。
それなら旅行の意味とか目的ってなんなんだろう?
と物思いにふける。
一方で、膝の上に置いたバックパックに目をやる。
このバッグとともに数十カ国旅してきた。
その旅に自分を駆り立てたのは、ただ「見てみたい、行ってみたい」という感情だけだ。
せかせか会社で働く日常から離れ、日本から離れて旅行している時は、やはり心が充電される。
普段の生活では、ベッドに入ってから1、2時間眠れないことはざらにあるが、旅行先なら気づけば夢の中にいる。
意味とか目的だけじゃなく、「ただやってみたい」という気持ちも大切にする。
理性と感情のバランスを取ることが大切だと理解できた気がした。
そしてもう一つ大切なことは、新しいことにチャレンジすること。
大好きな旅行でも、毎日同じように旅してたらきっと飽きてしまうだろう。
数十カ国行ってる今でも、すでに時々であるがマンネリを感じる瞬間がある。
だから、旅行先を変えるのはもちろんのこと、「今までの自分が選ばないようなルート・やり方」を意識的に選んでみる。
いつもの自分は文字通り弾丸のように観光地を巡っている。
しかしモンマルトルでは予定を置き去りにして座りこみ、丘から見える芸術的なパリの景色を眺めていた。
すると、普段は考えたこともない「自分の内面と向き合うこと」ができた。
ふと、いつぞやに空港で見かけた言葉を思いだし、
また階段を上がり始めた。
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